68回目のお誕生日が過ぎております
▼アマゾンで注文していた『国際シンポジウム 小津安二郎 生誕100年記念「OZU 2003」の記録』(蓮實重彦 山根貞男 吉田喜重 編著/朝日新聞社)が届いた。このシンポジウムにはぜひ行きたかったのだが、コテコテのため行けず、かろうじてNHK-BSの特番で会の模様を見るにとどまった。
▼それでも、ダイジェストではあっても、ペドロ・コスタ監督による「小津はパンクである」発言をはじめとして、十分に楽しめた。ただひとつ残念だったのは、私たちが小川監督の映画にハマってこのようなサイトを起ち上げるまでに至った途上、欠かすことのできなかった人物、アッバス・キアロスタミ監督の姿を拝めなかったことである。
▼2日間の開催だったから、編集の途上で1日分ごっそり省かれてしまったのか。いくらダイジェストでもそんなことはないだろう。ならば直前にキャンセルになってしまったのか--。しかし届いた本のオビを見るとちゃんと名前が載っているし、目次にも載っている。早速P.127へ飛んでみると事実はまったく違っていて、蓮實氏による紹介コメントの中に<監督の健康状態がよろしくない>、<途中でお引き取りいただくかもしれない>とある。実際、キアロスタミ監督は挨拶の後ですぐに壇上から降り、蓮實氏が監督の書いたものを代読するという段取りになっていた。
▼ちょっとショックだったし、心配になった。今年で64歳になるといっても、病気などとは無縁のパワフルな方だと勝手に思っていたのでなおさらだった。とはいえ逆に考えれば、パワフルだからこそ、キャンセルせずにイランからはるばる来日できたのだとも思える。
▼そう思い直して、<病院から帰るタクシーのなかで>書かれたという文章を読んでいくと、小津映画との出会いに始まって自作との関わりについてが淡々と述べられているのだが、途中、思いがけずに笑えてしまうところがある。それはキアロスタミ監督の映画世界そのもので、流石というか、私はそういう部分にパワーを感じていたのだと気づかされた。しかも、『5 five 小津安二郎監督に捧げる』という新たな作品がすでに完成しているということで、読み終えた時にはショックも心配も吹き飛んでしまっていた。
▼ところで、この本の冒頭へ戻ると、蓮實氏によるシンポジウムの《趣旨説明》があって、それは<小津安二郎監督の百回目のお誕生日が明日に迫っております>という言葉で切りだされていた。<お誕生日>の<お>がいいなと思い、蓮實氏の口調を想起しつつ、ふとカレンダーを見れば、6月25日、小川紳介監督生誕の日からもう1週間が経ってしまった。本当はこの場で何らかのお祝いをしたかったのだけれども、コテコテから簡単に逃れられない私たちには果たせず。こうして遅ればせながら、バイオグラフィを再読したりしつつ、「小川紳介監督の68回目のお誕生日から1週間が過ぎております」とお伝えするほかない。
text by Amaki
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