2004.07.01

68回目のお誕生日が過ぎております

▼アマゾンで注文していた『国際シンポジウム 小津安二郎 生誕100年記念「OZU 2003」の記録』(蓮實重彦 山根貞男 吉田喜重 編著/朝日新聞社)が届いた。このシンポジウムにはぜひ行きたかったのだが、コテコテのため行けず、かろうじてNHK-BSの特番で会の模様を見るにとどまった。
▼それでも、ダイジェストではあっても、ペドロ・コスタ監督による「小津はパンクである」発言をはじめとして、十分に楽しめた。ただひとつ残念だったのは、私たちが小川監督の映画にハマってこのようなサイトを起ち上げるまでに至った途上、欠かすことのできなかった人物、アッバス・キアロスタミ監督の姿を拝めなかったことである。
▼2日間の開催だったから、編集の途上で1日分ごっそり省かれてしまったのか。いくらダイジェストでもそんなことはないだろう。ならば直前にキャンセルになってしまったのか--。しかし届いた本のオビを見るとちゃんと名前が載っているし、目次にも載っている。早速P.127へ飛んでみると事実はまったく違っていて、蓮實氏による紹介コメントの中に<監督の健康状態がよろしくない>、<途中でお引き取りいただくかもしれない>とある。実際、キアロスタミ監督は挨拶の後ですぐに壇上から降り、蓮實氏が監督の書いたものを代読するという段取りになっていた。
▼ちょっとショックだったし、心配になった。今年で64歳になるといっても、病気などとは無縁のパワフルな方だと勝手に思っていたのでなおさらだった。とはいえ逆に考えれば、パワフルだからこそ、キャンセルせずにイランからはるばる来日できたのだとも思える。
▼そう思い直して、<病院から帰るタクシーのなかで>書かれたという文章を読んでいくと、小津映画との出会いに始まって自作との関わりについてが淡々と述べられているのだが、途中、思いがけずに笑えてしまうところがある。それはキアロスタミ監督の映画世界そのもので、流石というか、私はそういう部分にパワーを感じていたのだと気づかされた。しかも、『5 five 小津安二郎監督に捧げる』という新たな作品がすでに完成しているということで、読み終えた時にはショックも心配も吹き飛んでしまっていた。
▼ところで、この本の冒頭へ戻ると、蓮實氏によるシンポジウムの《趣旨説明》があって、それは<小津安二郎監督の百回目のお誕生日が明日に迫っております>という言葉で切りだされていた。<お誕生日>の<お>がいいなと思い、蓮實氏の口調を想起しつつ、ふとカレンダーを見れば、6月25日、小川紳介監督生誕の日からもう1週間が経ってしまった。本当はこの場で何らかのお祝いをしたかったのだけれども、コテコテから簡単に逃れられない私たちには果たせず。こうして遅ればせながら、バイオグラフィを再読したりしつつ、「小川紳介監督の68回目のお誕生日から1週間が過ぎております」とお伝えするほかない。

text by Amaki

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2004.04.24

neoneo坐の補足説明です

先日、小川映画全国上映情報欄に、5月上映情報(東京)としてアップした「neoneo坐・柿落とし オープニング企画『ドキュメンタリスト』」。ドキュメンタリー映画の最前線メールマガジンneoneoの購読者には周知の事実かと思いますが、そうでない方には「neoneo坐って何?」「柿落としってどういうこと?」と、結構疑問な事項が多いのではないでしょうか。というわけで、若干の補足説明です。

neoneo坐とは、映画プロデューサーの伏屋博雄さん(新設の人名辞典を参照)が創設した非営利の映像空間のこと。neoneo11号(2004.4.15)掲載の伏屋さんのテキストに記されていた創設の経緯を以下に引用します。

「neoneo坐は、作り手には上映し易い場として、観客には「見る場」がほしいという要求に応える場として創設されました。特に若い映画作家には発表の機会を与え、観客と切磋琢磨する関係をつくりたいと思います。つまりneoneo坐は、作り手と観客に開かれた上映運動体として、ノンフィクションの上映を通して、お互いが育つことを目的とする非営利映像空間です。

プログラマーの主導のもと、上映会を始め、映画講座、イベント等を行います。したがって、プログラマーを広く募集し、作品の選定、構成、当日の運営を担ってもらいます(監督がプログラマーになることも出来ます)。また、賛助会員、一般会員を募集し、運営の円滑化をはかります。告知は、チラシ、メルマガneoneo、ホームページ(準備中)、等で行います。

上記の目的に賛同する者は、神田小川町に出現した「たまり場」…「スペースneo」(30席)で、誰でも上映ができ、ご覧になれます。皆の力を結集して、「neoneo坐」を育てていこうではありませんか。」

と、いうわけでneoneo坐の「柿落とし」として企画されたのが、今回の上映会『ドキュメンタリスト』というわけです。5月15日、16日の二日間にわたり大重潤一郎監督の『小川プロ訪問記』はもちろんのこと、土本典昭監督や藤原敏史監督の作品が上映さる予定です。また、4月28日には有志に向けてneoneo坐のガイダンスが行われるそうです。

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2004.03.31

コテコテからやっと生還2

コテコテから復帰した甘木です。すでに公開終了から1ヵ月以上も経ってしまいました、アテネ・フランセ文化センターでの<特集 小川プロダクションの軌跡>。コテコテ状態をすり抜け、まだ見ていなかった『三里塚・五月の空 里のかよい路』、『映画作りと村への道』を見ることができました。

思えば2年前の2月、やはりアテネで催された小川プロ全作品上映の時もコテコテで、半分も見られず。上映スケジュールをプリントアウトして、観た作品は蛍光ペンで塗り、塗られていない作品の上映日と時間を意識しながら仕事をする日々が続きました。

次第に映画を観ることと仕事をすることの垣根がだんだん取り払われてきて、別に観ることが義務感につながるわけではなく、うわーこのままじゃ明日見にいけないじゃん、とか、この後2時間半も見たらヤバイな、とか考えることそのものが燃える感じをつくりだす。そのうち、もう時間がないことがわかってくると、なるべく短時間の映画から見ていこう、などと、効率を考え始めてしまっている自分を発見し、一人苦笑したりします。

映画を観るための効率って一体何なのか。しかも、そうまでして見たいものがあって幸せっ、なんて思ったことは一度もありません。ゆったりとして観たいものだなという渇望が残るだけです。結局、それは今回も同じことで、87分と54分だけの小川映画体験にとどまりました。全作品到達まで、まだ先は長いです。

text by Amaki

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2004.02.06

サイト始めました。

ドキュメンタリー映画の世界では、知らぬ者はいないというほど有名な故・小川紳介監督。なのに、その作品はいまだにビデオ化される様子もなく、またテレビで放映されることも、スクリーンにかかることも稀。

上映しているのなら遠くても見にいくつもりで、まめにネットを検索してはいるものの、気づいたら終わってたなんてことも、ままあったりして。上映情報だけでもいいから、誰かナビゲートするサイトを作ってくれないかな、と願いながら待つこと2年半・・・・。もう辛抱たまらん! 誰もやってくれないのなら、自分たちでやるしかありません。

というわけで、上映スケジュールを中心に書籍・文献など、”小川紳介”と名の付く情報を、甘木穣、大崎ヒロコヲジの2人の管理人がしつこく追跡します。とはいえ、まだまだ未完成な部分ばかり。「これでいいのか?」とのお叱りの声も畏れず、とりあえず見切り発車でGO!です。徐々に充実させていきますので、温かく見守ってやってください。

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